システムバイオロジーグループでは,システムレベルでの生命の理解を目指す 生物学の新しいパラダイム "システムバイオロジー" を確立しようと努力しています.この研究プロジェクトでは、

  1. 研究の基盤となるソフトウェア・プラットフォームとして、SBML(Systems Biology Markup Language) と SBW(Systems Biology Workbench) の標準化と開発
  2. 線虫細胞系譜の自動同定システムの開発 ( >> BIRD 大浪プロジェクトに移管)
  3. マイクロアレーからの遺伝子制御関係の推定
  4. 出芽酵母のフェロモンカスケードの網羅的測定とシステム解析
  5. 分裂酵母減数分裂時の染色体動態の分析
  6. 生命におけるロバストネスの基礎的研究

などを行っています.

システムバイオロジーの概要については、以下の論文を参照してください.

  • H. Kitano, Systems Biology: a brief overview, Science, 295:1662-1664, 2002
  • H. Kitano, Computational Systems Biology, Nature, 420:206-210, 2002

他リファレンス

ソフトウェア基盤開発

  • SBMLプロジェクト
  • SBW プロジェクト (>> DARPA BioSpiece プロジェクトへ移管)
  • * 多細胞生物系の遺伝子発現,発生などをシミュレーションできるアーキテクチャの構築
    (>> SBW/SBML プロジェクトへと統合)
  • 細胞動態(現在は染色体動態のみ)のシミュレーション技法の基礎研究

測定システム開発

  • 線虫細胞系譜の自動同定システムの開発 ( BIRD 大浪プロジェクトに移管)
  • 出芽酵母のシグナル伝達系の網羅的測定系開発
システム同定
  • 大規模遺伝子データからの Reverse Engineering

システム解析

  • 分裂酵母減数分裂期の染色体動態の解析

  • Saccharomyces cerevisiae を利用したシグナル伝達機構のシステム解析
  • 細胞内のカルシウム動態による信号伝達系修飾の解析

  • 生命のロバストネスの理論的研究
    • 細胞周期のロバストネスの理論的研究
    • サーカディアンリズムのロバスト性の解析
    • E.coli の化学走性に関する理論解析
    • システムのロバスト性と安全性解析の理論的研究
  • Drosophila の転写調節のシミュレーション(終了

システムバイオロジーとは?

システムバイオロジーは、生物をシステムとして理解することを目指した生物学の一分野です。生物をシステムレベルで理解しようという試みは、1960年代から生命科学で繰り返し挑戦されてきたテーマです。例えば、Weinerの提唱したサイバネティクスは、動物や機械を制御や通信理論の観点から記述しようという試みでした。残念ながら、その当時は分子生物学の研究が始まったばかりで、現象論的な解析しかできない状況でした。分子レベルでの知識を利用してシステムレベルでの解析が行えるようになってきたのは、きわめて最近のことです。ヒトゲノムプロジェクトに代表されるようなDNA配列解析などによる膨大なデータを利用することによって、ようやく我々は生物を真にシステムレベルで理解できる段階にきたのです。

それでは、「システムレベルでの理解」とは何でしょう?遺伝子やタンパク質といった分子に着目して研究を進めている分子生物学と異なり、システムバイオロジーではこれら分子で構成されるシステムに注目して研究を行っています。システム自体は物質で構成されていますが、その本質はシステムが起こす振る舞いにあり、それは単にシステムの構成要素を列挙しただけでは理解できません。同時に、ネットワークのようなシステムだけが重要だと考えるのは誤りです。システムの構成要素と両者が、システムの状態を決定するために必須の役割を担うのです。

システムバイオロジーの研究は、具体的には次の4つの大きな課題に分けられます。

  1. システムレベルでの理解
    物理国「も含めた遺伝子制御や生化学ネットワークなどを理解する
  2. システムのダイナミクスの理解
    定量的および定性的解析と、強力な卵ェ迫ヘを持つモデルと理論の穀z
  3. システムの制御方法の理解
    システムを特定の状態に誘導する制御理論の穀z
  4. システムの設計方法の理解
    特定の挙動を再現するシステムを設計できる方法の開発

生物システムの持つロバスト性などに着目した研究も活発に行われており、今後は創薬にも結びつく研究が進展すると考えられます。システムバイオロジーは、今世紀の主流を占める生物学の分野になると我々は考えています.


コンピュータを用いた仮想実験と従来の生物学との関係

[International Conferences on Systems Biology]

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